ディディム(Didim)に住みつくイギリス人たち


世界的にも有名なエーゲ海のリゾート地、ボドルム(Bodrum)。
その北約70kmに位置するアイドゥン県ディディム(Didim) *1は、ディディマ古代遺跡(Didyma Antik Kent) *2のお膝元の町。
目の細かい黄砂からその名で呼ばれるアルトゥンクム・ビーチ(Altınkum Prajı/黄金砂海岸)に代表される13kmに及ぶビーチと、アクビュク(Akbük)をはじめとした休暇村の建設により、年々リゾート地として発展を続けているディディムは、ここ数年来、イギリス人による不動産購入のメッカともなっているらしいのだ。


現在イギリス人の名のもとに登記されている住居は8500軒。さらに2000軒が登記申請中であり、許可が下りるのを待っている状況だという。
つまり、現時点で約1万軒のイギリス人住宅が、交通の不便な*3小さな町ディディムに出現しているというのだ。


イギリス人の移住に伴い、イギリス人とトルコ人の間での国際結婚も増加している。
昨年2005年、ディディム市に提出された婚姻届の数237件のうち、85件(約36%)が国際結婚であり、その多くは40歳以上のイギリス人年配女性と、アナトリア出身の若いトルコ人男性のカップルであるという。
また結婚後、ディディム市を転出してイギリスへと移住した若者の数も50人に上るという。

この国際結婚の社会的背景について、ここでは深く追求したりはしないが、現在、この熟女ならぬ「熟嫁(olgun gelin)」増加の是非について、ディディム市をふたつに分けるような議論が沸き起こっているという。


お市は、ディディムに移住したイギリス人に対して、アドナン・メンデレス大学(Adnan Menderes Üniversitesi)で教鞭をとるエテム・カラカヤ(Etem Karakaya)助教授とアイクット・ハミット・トゥラン(Aykut Hamit Turan)に調査を依頼した。
その調査結果は以下の通りである。


●ディディムを選ぶイギリス人像

  • 性別:
    • 女性 57%
    • 男性 43%
  • 結婚:
    • 既婚者 82%
    • 独身者 8%、
    • 離婚経験者 8%
    • 死別 2%
  • 平均年齢:55歳
    • 55歳以上 45%
    • 45〜54歳 37%
    • 35〜44歳 9%
    • 25〜34歳 6%
    • 16〜24歳 2%
  • 職業:
    • 退職者 66%
    • 残り34%は、公務員、労働者、商人、無職など
  • 収入:83%が年収15,000ポンド周辺かそれ以下
  • 学歴:
    • 小卒 58%
    • 高卒 26%
    • 大卒 16%
  • ディディムを選んだ理由:(重視した順)
    • 生活条件
    • ストレスが低いこと
    • 太陽と海
    • 周辺住民の心の暖かさ
    • 気候
  • ディディムでの居住年数:
    • 1年以下 49%
    • 3年 41%
    • 6年 6%
    • 7〜9年 4%

       (2006年4月9日付けHürriyet紙日曜版より)



ディディムに、イギリス人のいわばコロニーが出来あがりつつあるという話を聞いたのは、実はこれが初めてである。
ディディムといえばディディマの遺跡では有名だが、7年前に当地を訪れた私には、太陽と海と広大な草原しか見つからない、リゾート地というにはあまりに寂れた印象しか残らなかった。
当時の茫洋とした風景は、その後数年で大きく様変わりしたことだろう。


ディディムのイギリス人にせよ、アランヤ(Alanya)にコロニーを築いたドイツ人にせよ、足の便の悪い岬の突端のような土地や、谷あいの寒村のような場所を好むのには、何か歴史民族的な謂れでもあるのだろうか・・・・?

*1:別名イエニヒサール(Yenihisar)

*2:アポロン神殿とメデューサの頭で有名。ギリシャのデルフィと並び神託のメッカとして栄えた。
このブユック・メンデレス河の河口一帯は、ディディマをはじめ、プリエネ、ミレトス、ヘラクレイアといった古代遺跡の宝庫である。

*3:最も近いボドルム空港から約70km。タクシー、ドルムシュ、バス等を利用して1時間弱。イズミール空港からは140km。