トルコの巨大ホテル王国アンタルヤ


昨年2005年度、トルコを訪れた旅行者数は、約2100万人*1。観光収入は139億ドル。
WTO(世界観光機構)が年3回発表する「世界観光指標」による最新発表によれば、トルコは前年比20%と、ヨーロッパで最も旅行者数が急激に増加している国であることが明らかになった。


現在、トルコ全国に点在するホテルのベッド総数は、80万床といわれているが、年々拡大するトルコの観光市場とそれにともなうホテル需要を鑑みると、2010年までにさらに20万床、合計100万床のベッド数が必要になると推測されている。


新しい市場を睨んだホテル建設が全国で進められる中で、これまでのところ、投資家の目に最も魅力的に映ってきたのが、アンタルヤであったのは間違いない。
昨年2005年度、アンタルヤでまったく新規の投資として、15億8774万YTL(約1430億円)に相当する73件の開発が誘致された。
これらの開発が実現すれば、合わせて約3万7千床の受け皿が新たにできることになる。
ちなみに、73件の内訳は、マナヴガットの23件、アランヤの14件、ケメルの17件、残りはセリック、ベレキ、クムルジャとなっている。


アンタルヤがトルコにおけるホテル開発の中心地であることは、以下の県別ホテル分布表をご覧いただければ、一目瞭然であろう。

県名        ホテル数 部屋数 ベッド数
アンカラ          43   4521   9245
アンタルヤ        388 108827  246200
アイドゥン*2          48   7573  17194
イスタンブール      193  20973  42258
イズミール         59   8898  19447
ムーラ*3           248  35665  83790
ネヴシェヒル*4        38   3391    7047
その他合計        295  24973  58281


さらに、1ホテルあたりのベッド数を平均すると、アンタルヤのホテルは1ホテルあたり633床と、アンカラの215、イスタンブールの219、イズミールの330、ムーラの338、アイドゥンの358をも抜いて、桁外れに大きいことが分かる。


したがって、「トルコで最も大きな100のホテル」のうち、76をアンタルヤ県内に位置する4ツ星・5ツ星の巨大リゾートホテルが占めていたとしても不思議はない。
しかも7位をムーラ県フェティエのリゾートホテルに奪われたことを除けば、上位25位をアンタルヤ県内のリゾートホテルが独占しているのである。


ちなみに、現在トルコ最大のホテルは,アンタルヤ県ケメル市ベルディビにある「Sungate Port Royal de Luxe Resort」で、1173室、2500床。それと並びほぼ同格と見てよいのが、同じくアンタルヤ県アランヤ市にある「Majesty Club Oasis Beach」の1163室、2586床である。


●コングレス・ホテルの将来性


昨年2005年度、トルコで開催された国際会議数は50件を記録した。
ICCA(イスタンブール・コングレス&ビジター・ビューロー組合)の記録によれば、2005年の1年間、イスタンブールで開催された国際会議数は34件。また会議を目的にイスタンブールを訪問した旅行者数は4万3千人。今年度2006年については、5万5千人を目標としているという。


また会議施設としては、全会議数の59%がホテルを主会場として利用している。ホテル以外には、事務所、小さい施設、リゾート、会議専門センターが続く。
国際会議に相応しい規模のコングレス・サロンを有するホテルという観点で、「トルコで最も大きな50のコングレス・サロン」がリストアップされた。
ここに、アンタルヤ県からは約半数にあたる23のホテルがランク入りしている。


なおトップは、アンカラにある「Büyük Anadolu Hotel」で、16の会議場を持ち、最も大きな会議場の収容人数は3000人。あわせて8000人の最大収容人数を誇る。
2位が、イスタンブールの「Hilton İstanbul」。27の会議室、最も大きな会議場は3000人収容、最大収容人数は7190人。
3位が、同じくイスタンブールの「Grand Cevahir Hotel & Convention Center」で、22の会議室、最も大きな会議場が3000人収容。最大収容人数は6000人である。
(なお、トルコを代表する国際会議場「İstanbul Lütfü Kırdar Convention & Exhibition Centre」は、ホテル施設を持たない会議専門施設として、このリストから外されている)


ちなみに世界の会議市場規模は、1700億ドル。うちトルコの市場占有率は、3億ドルでわずか2%にすぎない。
トルコは、この市場における大きな潜在需要を満たすよう努力する必要がある。なぜなら、会議目的の旅行者は、一人あたり通常の観光客の3〜4倍の収入をもたらすからだという。
現状でいえば、会議目的の旅行者は、トルコを訪問する全旅行者のわずか0.2〜3%を占めるに過ぎない。このパーセンテージを早急に上げる必要があり、国際会議場を備えた巨大コングレスホテルの建設の余地がここにある。


●ゴルフホテルもアンタルヤ優位


世界のゴルフ人口は約5700万人で、世界には3万1千箇所のゴルフ場がある。これによる世界の「ゴルフ・トゥーリズム」市場規模は、約1200億ドル。
トルコでも、この市場規模と手付かずの土地に恵まれた条件を生かし、ゴルフ場を有する「ゴルフ・ホテル」建設が年々進んでいる。


ゴルフを目的とする旅行客は、平均して裕福な層に属し、ゴルフおよびホテルへの支払い以外にも、1日平均60ユーロを落としていくという。
そのため、自身はゴルフ場を持たずとも、近隣のゴルフ場と契約を結んだ上で「ゴルフホテル」を名乗るリゾートホテルも増えている。


トルコで現在経営されているゴルフホテルは11軒。うち9軒がゴルフ場を有する。
トルコで最も規模の大きいゴルフホテルは、ベレキ(アンタルヤ)にある「Gloria Golf Resort」。系列の「Gloria Verde Resort」を含め、合計3コース45ホールのゴルフコースを備えるこのホテルは、同時に東ヨーロッパ圏および中東圏においても最大規模といえる。
ベレキでは他にも、合計2コース36ホールのゴルフコースを共有する「Sirene Golf Hotel 」、「Kempinski The Dome Hotel」や、27ホールのコースを有する「Tatbeach Golf Resort」、各ゴルフクラブと提携する「Letoonia Golf Resort」、「Limak Arcadia Golf&Sport Resort」などがある。



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『Turkishtime』誌では、おそらく市場規模の観点から、「コングレス・ホテル(コンベンション・ホテル)」および「ゴルフ・ホテル」市場にまで言及したにとどまったが、太陽の燦々と降り注ぐ暖かな気候と、海と山に囲まれた美しい景観、豊富な土地を有するアンタルヤでは、それに続く新たな市場として、サッカーのキャンプ需要に対応した「フトボル・トゥリズム(サッカー・トゥーリズム)」と、リゾートでのんびり滞在しながら人工透析、美容整形、レーザーによる近視矯正手術、人工授精などの治療を受けようという患者を対象とした「サールック・トゥリズム(健康トゥーリズム)」にも注目が集まっている。

*1:ちなみに国連機関のひとつにあたるWTO(世界観光機構)の発表によれば、2005年度の全世界での海外旅行者数は8億800万人。したがって、トルコの占める割合は2.5%となる。

*2:クシャダス、ミレトス、ディディマ等含むエーゲ海に面した地方

*3:ボドルム、マルマリス、ダルヤン、フェティエ等含むエーゲ海〜地中海に面した地方

*4:ウルギュップ含むカッパドキア地方